虫歯治療・根の治療
虫歯治療・根の治療
虫歯とは、専門的には「う蝕」と呼ばれる歴とした病気です。
虫歯は、色々な要因が絡み合って起こる非常に奥の深い病気なのですが…
簡単にまとめると「細菌がつくる酸によって歯が溶けて壊れる」病気です。
誰しもお口の中にはたくさんの細菌が棲んでいます。
種類は違えども、口腔内には便の中と同じくらいかそれ以上の細菌が棲んでいると分かっています。
その細菌たちの中には、酸を生み出すものがいます。
中でも代表的なものがミュータンス菌(Streptococcus mutans)です。
その細菌たちが出した酸によって歯が溶けすと、さらに細菌たちは歯の溶けたところに入り込み、どんどん歯を壊しながら、中へ中へと侵入していきます。
その様子が、虫喰いのように見えたので、「虫歯」と呼ばれるようになったのでしょう。
虫歯で壊れてしまった歯
この腐って壊れた歯を治療するのが虫歯治療です。
では、どのように治療するのでしょうか?
虫歯治療のステップをとってもシンプルに説明すると…
です。
歯医者さんで虫歯治療を受ける時、「虫歯を削って詰め(被せ)ますね」と説明を受けたことがあるかもしれませんが、「削って」が①、「詰める(被せる)」が②に当たります。
この「削って詰める」については、世界中の歯医者さんが生涯をかけて研究したり議論したりと、とっても奥深く、興味深い世界なのですが…、
詳しく書きすぎると大変なので、今回はもう少しだけ詳しく見ていきましょう。
とその前に…
虫歯治療のご説明をするには、歯の構造についてご説明する必要があります。
ところで、皆様は、抜歯した親知らずを見たことがあるでしょうか?
抜歯した親知らずを見て「歯って意外と大きい!」と驚いた方もおられるかもしれません。
それもそのはず、歯はお口の中を覗いても頭の部分しか見えませんが、実は、歯茎の下には、下の図のように根があるのです。
普段、歯茎の中に隠れている歯の根は、歯の頭の部分より平均的に長いため、歯の全体は意外と大きいのです。
全ての歯には根っこがあります。
そして、その断面は下の図のようになっています。
一番内側の空洞(歯髄腔)に神経や血管が入っています。
いろいろと細かい構造もあるのですが、ここでは、矢印で指している神経や血管のある部分に注目しましょう。
健康な歯では、このように歯の一番奥には神経や血管が入っています。
その神経や血管を「歯(し)髄(ずい)」と言い、「歯髄」がある空間を「歯髄腔(しずいくう)」と言います。
この「歯髄」に、細菌が到達しているか、していないかで、治療の方針が大きく変わります。この断面をさらにシンプルな図にすると以下のようになります。
健康な状態。「歯髄」が根の先から歯の中へ入り、「歯髄腔」の中を満たします。
歯の硬い部分が虫歯になってしまった状態。まだ細菌は「歯髄」まで到達していない。
細菌が「歯髄」まで到達してしまった状態。
「歯髄」はどんどん腐っていく。
画像出典元:歯科素材.com
すなわち、この図でいうところの、AとBでは、治療の内容が変わるのです。
Aのように、「歯髄」まで細菌が到達していない場合は、細菌に汚染されてしまった歯の硬い部分だけ削って取り除き、詰め物や被せ物で歯の形を補えば治療は完了です。(詳細は詰め物・被せ物のページへ)
Aの段階の虫歯の場合、冷たいものがしみる程度で、強い痛みが出ることはあまりありません。
全く痛みがない場合すらあります。
一方、Bのように、「歯髄」まで細菌が到達してしまった場合には、汚染された硬い部分を取り除くだけでなく、汚染された「歯髄」を取り除き、「歯髄腔」の中をお掃除する治療が加えて必要になります。
この治療は、一般に「根の治療」、専門的には「根管治療」と呼ばれます。
Bの段階まで来ると、夜も眠れないほどズキンズキンと強く痛む場合がほとんどですが、ここまで来ても特に痛みが出ないこともあります。
虫歯は必ず痛みが出るわけではなく、見た目でも奥歯や歯と歯の間の虫歯などは気が付きにくいです。
いつの間にか歯がボロボロに…なんてこともありえますので、やはり定期健診が大切です!
と…、少し話が脱線してしまいました。
虫歯菌が歯髄腔まで到達してしまった場合に必要となる「根の治療」についてのご説明に戻りましょう。
「根の治療」は、虫歯菌に感染した「歯髄」を取り除き、「歯髄腔」をお掃除する治療と先ほどご説明しましたが、実はこの「根の治療」、結構骨の折れる治療なのです…。
というのも、本当の「歯髄腔」はさきほどのイラストのように単純な形ではありません。
右の写真(準備中)は、本当の歯の断面の写真です。
黒く染色された部分が実際の「歯髄腔」。
網目状になったり枝分かれがあったりと、迷路のように入り組んでいるのが見えますね。
細菌が「歯髄腔」にそれほど侵入していない場合ならまだよいですが、細菌が「歯髄腔」の隅々まで侵入し、網目や枝分かれのところで、感染の巣を作ったときには、治療が大変になります。
加えて、歯は小さく、その中の「歯髄腔」はさらに小さいです。
歯を引っこ抜いて割って中身を直接見ながら掃除できればいいですが、そんなわけには当然いきません。
歯の上から歯を壊さないように慎重に「歯髄腔」をお掃除するしかないのです。
さてこのミクロな迷宮を、限られた経路からどのようにきれいにするのでしょうか?
掃除するための器具は歯の上(矢印の方向)からしか入れられないし、上からしか歯髄腔の中を見ることができない。
画像出典元:歯科素材.com
このミクロの迷宮をきれいにするため、「ファイル」と呼ばれる細長い器具(下の図の針金のようなもの)を使って、中の汚れをかき出したり、超音波の機械や殺菌作用のあるお薬で洗浄したり…、
「ファイル」という細長い器具で「歯髄腔」をお掃除する。
様々なものを駆使して、少しでも細菌の数を減らすようにお掃除します。
当院ではこれらに加え、より良い治療を行うために、以下の機器を導入しております。
歯科用の顕微鏡です。小さな歯の中を拡大して見ることで、より確実に治療をすることができます。
立体的に撮影できるレントゲンです。歯の内部構造を立体的に見ることができます。
高性能な電動の「ファイル」です。効率的かつ確実に治療を進めることができます。
ラバーダムを根管治療に用いることで、歯の内部に細菌が入るのを防いだり、器具を誤って飲み込んだりするリスクを下げ、安全に治療をすることができます。
当院では、これらのような機器を用い、できる限り歯が長持ちするよう丁寧な治療を心掛けております。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
さらに詳しいことが知りたい、虫歯や根の治療について相談したいという方は、お気軽に当院までお越しくださいませ。